OGYM

2017年9月2日(土)-10月15日(日)

​京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

<身体0ベース運用法>の基本トレーニングである物編・場所編・リズム編を通して身体知を獲得するための場として「0GYM」を京都市立芸術大学ギャラリ-@KCUAに作りだした。この「0GYM」ではトレーニングジムやクライミングジム、パルクールジムなどのように様々な形で身体を関わらせる場としての形式を引用し、道具や映像などの展示物を鑑賞するだけでなく来場者自身が身体を動かしてトレーニングすることを想定した空間としました。

 

​物編トレーニングルームでは展示されている道具としての形状や重さの異なる石や木を用いランニングマシーン物を使った「走る」「歩く」のトレーニングを行います。また、同じ空間には場所編のトレーニングである<坐・0>を行うための椅子として高さの異なる「高変椅子」と座面の角度が変化する「度変椅子」を設置しました。

全身化する描画運動

「物編」のトレーニングでは、海や川で収集してきた流木や石、道具として使われてきた棒やレンガなどをトレーニング道具〈0具〉として使います。形質感、そして身体の動きや手つきを発見していきます。一つ一つ特徴が異なる〈0具〉を〈身体〉を用いて丁寧に観察すると、道具の成り立ちがわかります。自分の〈身体〉を基準として心地の良い形や

や重さ、質感が異なるものを持って歩いたり、走ったりすることによって「歩く」構造、「走る」構造など多くのことを発見することができます。

坐・0

〈座・0〉では、「座る」ことを通して〈身体〉を探っていきます。高さの異なる「高変椅子」と座面の角度が変わる「度変椅子」を用いた2種類のトレーニングを行います。「高変椅子」では、デザインされたものとは異なる高さの椅子に「座る」ことによって「場」としての椅子に〈身体〉を乗せて合わせていきます。その時、〈身体〉の重心や全身の扱い方をみつけ出すことができます。特に製品としてデザインされた椅子の座面とは大きくかけ離れた高さの座面を持つ椅子の方が、〈身体〉の動きを引き出すことを発見できるのです。

「度変椅子」は、回転椅子を斜めに傾けた椅子です。座りながら回転していくと座面が前後左右様々な方向に傾いていきます。変化する座面に対して上半身を傾けて、倒れないように全体のバランスを取っていきます。それを連続して行っていくと、上半身とそれを乗せる受け皿としての骨盤との接点を認識することがで

きます。この接点の発見は「場所編」のトレーニングなど、その他のトレーニングでも応用できるものです。

 

「場所編」のトレーニングスペースは、人工的な都市の地形と自然の地形の二つのイメージを組み合わせた構成になっています。前者の人工的な都市の地形として、水平垂直の構造で作られた階段にアスファルトや白線、マンホールなどの素材の写真を貼ったものを設置しました。そして、後者の自然の地形として、斜面や岩をイメージした構造に様々な形状の石を配置しています。​

「人工的な都市の地形」エリアの中央に作られた階段は、手前から3段目までは建築基準に則った寸法になっていますが、4段目以降は高さや幅が不規則になりま」す。階段のリズムが変化すると身体は違和感を感じ始め、一歩一歩に意識を持つようになります。さらに階段の左側では、石の上だけを歩くと、足元の地形が都市から自然へと変わっていきます。そうすると足の平や指、関節などの微妙な身体操作が必要となります。

「自然の地形」エリアでは石の上を移動し、変化する石の形一つ一つに足を合わせていくトレーニングをします。これを繰り返していくと、足の平も道具を扱う時の手の平のように自由に扱えることが発見できます。足全体の関節や筋肉は前後だけでなく、斜めや横方向にも連動して動いていきます。また、背負子を使って物を担ぎながら移動することにより、「物編」を踏まえた応用編として「身体に乗る物と物に乗る身体の重心の合わせ方」を探っていきます。腰の位置を低くして足のクッションを使うことにより、上半身を安定させる「物を扱う身体の移し方」を学びます。

分厚い靴を介する足元の素材の小さな凹凸や質感は、大きな地形に貼り付けられた視覚情報のようなものとして捉えられます。しかし、裸足で触れると、それらは地形としての影響をより直接的に身体に与えます。凹凸はより大きなものとして感じられ、素材の質感や温度もそれぞれ異なる表情をみせます。何度も接触することによってそれぞれに持っていた視覚情報と新しく得た触覚情報が合致して存在し始めます。足元を見ていなくてもそこに存在する地形が視覚化されるようになっていくのです。その時、「身体AR」(拡張現実)が作られ、眼に映っている視覚情報の下に新しいモニターが出現するかのように感じられます。では、触覚から視覚が作られるのであれば、視覚から足元に触覚を生み出すことはできるのでしょうか?

様々な生活労働環境の中で使われてきた背負子は、運搬する場所の地形や運ぶ荷物など、目的に合わせて姿を変えてきました。例えば、背負子に載せる荷物の重心位置は今回用意した「カネリオイコ」のように重い丸太を運ぶものであれば上重心。「キエーコ」のように嵩は大きく軽いものであれば荷を載せるツメは下の方に付き、下の方に重心がきます。背負子が変わると〈身体〉の操作方法も変わってきます。

・0

日常生活の中の建築やプロダクトは、私たちの〈身体〉への意識を形作っています。それらの物のあり方は指一本で物事がなされるようなものではなく、人が元来持つ身体機能や意識を引き出しながら発展していくべきであると考えます。

 

私は建築家の加藤正基とともに、裸足で都市や自然の地形を移動しながら〈身体〉を通したリサーチを行いました。二人で訪れた三重県の明朝渓谷や羽鳥峰では、根っこや石が潜む腐葉土や石が転がるガレ場の斜面、岩と砂利の山頂、そしてスポンジのように水を沢山含んだ分厚い苔など様々な地形を足で一つずつ捉え、足元に向けられる〈身体〉の意識を確認していきました。また、河原に転がる大きな石やその隙間を座ったり寝たりする場所と設定し、〈身体〉をその場に合わせてみました。

 

そうした経験から〈寝・0〉は「寝る」「座る」を通して自分の〈身体〉を意識させるものとして制作しました。〈寝・0〉は一見平らに見えますが、〈身体〉を乗せて体重をかけると内部の形を感じることができます。片方は大きな石と石の隙間をイメージしたもので、真ん中にグランドキャニオンのような大きな谷間が現れます。そこに寝転び、〈身体〉を挟み込んでいくと身体全体の大きさや形が意識されるのです。もう片方は根っこや石が潜む腐葉土からイメージしたもので、点在する凹凸に〈身体〉の骨格などの凹凸を合わせ、身体の細部を意識することができます。

<寝・0>プラン画.jpg
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「リズム編」のトレーニングスペースは、「丸太はつり」「麺切り」「仏像彫り」の3つの職人が作り出すリズムと3種類の異なる形状の道具としての石や棒を用意しました。スペース中央にある踏台の上で[目的×物×身体=リズム]の組み合わせによるトレーニングを行う空間としました。

職人が作り出す〈他人のリズム〉は、身体と道具と目的が組み合わさって作られたものです。その動きを観察すると、理にかなった細やかな手や足と全身の操作が見られます。〈他人のリズム〉を楽譜として、無意識と意識を行き来しながら動きを作っていきます。その動きからは造形的な身体の形を見出すことができます。

〈身体〉の動きは複雑です。例えば道具を持つ手つきにしても、一連の動きの中に握る、放す、緩める、引っ掛けるなど言葉で表せるもの以上の選択肢があるように、同時に全身全ての場所に無数の可能性が広がり、〈身体〉の一部の動きのちょっとした違いだけで全体が大きく変わってくるのです。〈他人のリズム〉に合わせて一つ一つの動き方の組合せを選んでいくと、最初の動きが流れていきます。完成された動きを反復

すると、その背景に〈他人のリズム〉の労働の風景が見えてきます。

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